業務後自動点呼

運送業界における慢性的な人手不足や、運行管理者の長時間労働が課題となる中、注目を集めているのが「業務後自動点呼」です。

業務後自動点呼は、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使い、運行管理者等がその場に立ち会わなくても、運転者が業務終了後の点呼を受けられる仕組みです。

ただし、機器を導入するだけで自由に実施できるわけではありません。使用する機器、実施場所、本人確認、アルコール検知、点呼記録、異常時の対応体制、届出などが制度上の要件を満たしているか確認する必要があります。

なお、ICTを活用した点呼制度は改正が続いており、現在は「遠隔点呼」に加え、運行管理者等が立ち会わない「業務前自動点呼」「業務後自動点呼」が制度化されています。本記事では、それぞれを区別しながら、2026年8月時点の情報を分かりやすく整理します。

目次

業務後自動点呼とは?

業務後自動点呼とは、運転者が業務を終了した後に行う点呼を、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使用して実施する方法です。

従来の対面点呼では、運行管理者等と運転者が同じ営業所や車庫などにいる必要があります。これに対して業務後自動点呼では、認定機器が本人確認、酒気帯びの有無、運転者からの報告事項などを確認し、点呼結果を記録・保存します。

そのため、運行管理者等が点呼の場に立ち会わなくても、制度上認められた方法で業務後の点呼を実施できます。

ただし、業務後自動点呼を導入しても、運行管理者そのものが不要になるわけではありません。酒気帯びや体調異常などが確認された場合や、機器の故障が発生した場合に、運行管理者等が対応できる体制を整える必要があります。

※参照元:国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html

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点呼方法の違いが分かる早見表

対面点呼、IT点呼、遠隔点呼、業務前自動点呼、業務後自動点呼は、運行管理者等の立ち会いの有無や実施できる場所、使用する機器などが異なります。まずは、それぞれの違いを一覧で確認しましょう。

比較項目 対面点呼 IT点呼 遠隔点呼 業務前自動点呼 業務後自動点呼
基本的な方法 運行管理者等と運転者が同じ場所で対面して実施 映像・音声を使い、離れた営業所や車庫などを接続して実施 告示要件を満たす機器・システムを使い、離れた場所から実施 認定機器が業務前に必要な確認・判定を行う 認定機器が業務後に必要な確認・判定を行う
運行管理者等の立ち会い 必要 必要 必要 原則不要。ただし異常時に対応できる体制が必要 原則不要。ただし異常時に対応できる体制が必要
主な実施場所 営業所、車庫など 適用要件を満たす営業所・車庫間など 営業所、車庫、車内、待合所、宿泊施設など 認定機器ごとに認められた場所 認定機器ごとに認められた場所
本人確認 対面で確認 映像等で確認 生体認証などで確認 生体認証など、認定機器が定める方法で確認 生体認証など、認定機器が定める方法で確認
記録方法 紙または電子データ 点呼結果などをシステムに記録 点呼日時や確認結果などをシステムに記録・保存 確認・判定結果をシステムに自動記録・保存 確認・判定結果をシステムに自動記録・保存
向いているケース 同一拠点で直接状態を確認したい 従来制度の範囲で複数拠点の点呼を集約したい 複数拠点や車内などから点呼を実施したい 早朝の業務前点呼を省人化したい 深夜・早朝を含む業務後点呼を省人化したい
※制度や実施可能な範囲は、事業種別、使用機器、営業所・車庫の関係などによって異なります。実際の導入前に、最新の告示・通達と管轄の運輸支局等の案内をご確認ください。

業務後自動点呼の仕組み

業務後自動点呼は、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使って行います。本人確認、アルコール測定、運転者からの報告、点呼結果の記録・保存などをシステム上で行うのが基本的な仕組みです。

運転者は業務終了後、自動点呼機器で本人認証を行い、アルコール検知器による測定や必要事項の報告を行います。問題がなければ点呼結果が自動的に記録されます。

一方、酒気帯びなどの異常が確認された場合や、本人確認が正常に完了しない場合などは、運行管理者等へ連絡し、必要な対応を行える仕組みが必要です。

点呼の結果やアルコール測定値などを電子データとして管理できるため、紙の点呼簿への転記を減らし、過去の記録を検索・確認しやすくなる点も特徴です。

業務後自動点呼とほかの点呼方法との違い

業務後自動点呼と対面点呼の違い

対面点呼では、運行管理者等が運転者と同じ場所で、顔色や声の調子、酒気帯びの有無などを確認します。

一方、業務後自動点呼では、国土交通大臣の認定を受けた機器が必要な確認を行います。正常に点呼が完了すれば、運行管理者等がその場で立ち会う必要はありません。

そのため、深夜・早朝に帰庫する運転者のために運行管理者等が営業所で待機する負担を減らしやすくなります。

業務後自動点呼とIT点呼の違い

IT点呼では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのIT機器を使い、映像・音声を通じて運行管理者等が運転者へ点呼を行います。

つまり、IT点呼では点呼を行う運行管理者等が必要です。

これに対して業務後自動点呼では、認定機器が本人確認やアルコール測定、必要事項の確認・記録を行うため、運行管理者等がその場に立ち会わずに点呼を実施できます。

業務後自動点呼と遠隔点呼の違い

遠隔点呼も、営業所や車庫、車内、宿泊施設など離れた場所から点呼を行える制度です。

ただし、遠隔点呼では映像・音声等を通じて運行管理者等が点呼を行います。一方、業務後自動点呼では、認定機器を使って運転者が単独で点呼を受ける点が大きな違いです。

業務後自動点呼と業務前自動点呼の違い

どちらも国土交通大臣の認定を受けた機器を用いて、運行管理者等がその場に立ち会わずに実施できる自動点呼です。

違いは実施するタイミングです。業務前自動点呼は乗務を開始する前に行い、運転者が乗務できる状態かを確認します。業務後自動点呼は乗務終了後に行い、酒気帯びの有無や運行中の異常、車両・道路状況など必要事項を確認します。

業務後自動点呼制度の成り立ちと改正の経緯

自動点呼は、運送事業者の安全性を確保しながら、運行管理者等の業務負担を軽減するため、実証実験や制度改正を重ねながら対象が広げられてきました。

時期 主な動き 制度上の意味
2021年 業務後自動点呼の実証実験が進められる 自動点呼の安全性や運用方法について検証が進む
2022年 一定の要件を満たす機器を用いた業務後自動点呼の運用が進む 運行管理者等が立ち会わない点呼の実用化が進む
2023年4月 業務後自動点呼が省令・告示に位置付けられる 実証的な枠組みから法令に基づく恒久的な制度へ移行
2025年4月 業務前自動点呼が制度化 業務後だけでなく業務前の点呼についても自動化が可能になる
2026年 遠隔点呼・自動点呼を含む点呼制度の整理・見直しが進む ICTを活用した点呼方法の選択肢がさらに広がる

このように、現在の点呼制度は、運行管理者等と運転者が直接対面する方法だけでなく、遠隔点呼や自動点呼など、ICTを活用した方法へ選択肢が広がっています。

業務後自動点呼の導入要件

業務後自動点呼を検討するときは、「機器要件」「設備・環境要件」「運用体制要件」の3つに分けて確認すると、自社が導入できるか判断しやすくなります。

機器要件

業務後自動点呼では、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使用する必要があります。

一般的なWeb会議システムや、市販のアルコール検知器とタブレットなどを組み合わせただけでは、制度上の業務後自動点呼として実施できません。

導入時には、主に次の点を確認します。

  • 業務後自動点呼に対応した認定機器であること
  • 本人確認を適切に行えること
  • アルコール検知器と連携できること
  • 運転者から必要事項の報告を受けられること
  • 必要な確認・判定結果を記録できること
  • 点呼記録を適切に保存できること
  • 異常発生時に運行管理者等へ連絡できること

設備・環境要件

自動点呼機器を導入するだけではなく、適切に点呼を行える環境を整える必要があります。

  • 顔認証等による本人確認を適切に行えるカメラ・照明環境
  • 認定機器に対応したアルコール検知器
  • 必要な通信環境
  • 運転者が安全に機器を操作できる環境
  • 点呼記録を安全に保存・管理できる環境
  • 機器故障や通信障害が発生した場合の代替手段

また、実施できる場所は認定機器によって異なります。営業所・車庫だけでなく、認定内容によっては車内や待合所、宿泊施設などが対象となる場合もあります。

運用体制要件

設備を導入するだけでは、業務後自動点呼を適切に運用できません。社内の運行管理規程やマニュアルに実施方法を定め、次のような体制を整える必要があります。

  • 酒気帯びなどの異常を検出した場合に運行管理者等へ連絡できる体制
  • 本人確認ができない場合の対応手順
  • 機器故障や通信障害時に別の適法な点呼方法へ切り替える手順
  • 運転者への機器操作教育
  • 点呼記録を適切に保存・管理する体制
  • 顔画像などの個人情報を適切に取り扱うルール
※参照元:国土交通省「運行管理高度化ワーキンググループ」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html

業務後自動点呼を導入する手順

導入要件を確認したら、対象となる点呼や実施場所を決め、認定機器の選定、届出、設備整備、教育、試験運用の順に進めます。

1.現在の点呼業務と課題を整理する

まず、どの営業所で、誰が、何時に、何人の運転者へ業務後点呼を行っているかを整理します。

深夜・早朝の運行管理者等の配置負担、待機時間、残業時間、点呼記録の作業時間などを洗い出し、自動化する範囲を明確にします。

2.自動点呼を導入する対象範囲を決める

どの営業所や車庫で業務後自動点呼を実施するのか、どの時間帯や運転者を対象にするのかを決めます。

車内や宿泊施設などでも利用したい場合は、その場所での利用が認められた認定機器かどうか確認する必要があります。

3.管轄の運輸支局等へ事前相談する

営業所・車庫の関係や予定している実施場所、使用する機器などを整理し、必要に応じて管轄の運輸支局等へ事前に相談します。

4.システム・機器を比較して選定する

国土交通大臣の認定を受けた機器の中から、自社の運用に合うシステムを選びます。

本人認証方法、アルコール検知器との連携、点呼記録、データ保存、異常時の通知方法、既存システムとの連携、サポート体制などを比較しましょう。

5.施設・通信環境と運用規程を整える

カメラや照明、通信環境、アルコール検知器などが正常に使用できるか確認します。

あわせて、対象者、操作方法、異常時対応、機器故障時の代替手段、個人情報の取扱いなどを運行管理規程や社内マニュアルに定めます。

6.必要な申請・届出を行う

業務後自動点呼を実施する場合は、原則として実施予定日の10日前までに必要な届出を行います。

様式や添付書類は改正されることがあるため、国土交通省の最新様式と管轄の運輸支局等の案内を確認してください。

7.教育と試験運用を行う

運転者に対し、本人認証、アルコール測定、報告事項の入力、異常時の連絡方法などを教育します。

本格稼働前に試験運用を行い、認証、測定、記録保存、通知などが正しく機能するか確認します。

8.本格運用と定期的な見直しを行う

運用開始後は、点呼漏れ、記録不備、認証エラー、機器故障などが発生していないか定期的に確認します。

制度改正や営業所の変更、システム更新があった場合は、届出や運用規程の見直しが必要かも確認しましょう。

業務後自動点呼のメリット

早朝・深夜の点呼体制を組みやすくなる

業務後自動点呼では、運行管理者等が点呼の場に立ち会わなくても、認定機器を使って運転者が点呼を受けられます。

深夜や早朝に帰庫する運転者のためだけに運行管理者等が営業所で待機する負担を軽減でき、勤務時間の適正化につながります。

運行管理者等の業務負担を減らせる

本人確認やアルコール測定、必要事項の確認、点呼記録などをシステム化することで、運行管理者等が行う作業を減らせます。

限られた人員を運行計画、安全管理、運転者への指導など、ほかの業務へ配分しやすくなります。

確認漏れや転記ミスを減らせる

システムに設定された手順に沿って確認を行い、アルコール測定結果などを自動的に取り込むことで、確認漏れや手書きによる転記ミスを減らせます。

点呼記録を検索・共有しやすくなる

点呼結果を電子データで保存すれば、必要な記録を検索・出力しやすくなります。

複数の営業所の点呼記録を一元管理できれば、社内確認や監査対応の効率化にもつながります。

点呼業務の標準化につながる

確認項目や実施手順をシステム上で統一することで、担当者による確認方法のばらつきを抑えやすくなります。

業務後自動点呼のデメリット・注意点

導入費用と運用費用がかかる

認定機器、アルコール検知器、カメラ、通信機器、点呼管理システムなどの費用がかかります。

初期費用だけでなく、月額利用料、保守費、機器更新費なども確認しましょう。

機器・通信環境に左右される

本人認証ができない、アルコール検知器が正常に作動しない、通信障害が発生するなどのトラブルが起こる可能性があります。

自動点呼を実施できない場合に備えて、対面点呼など別の適法な方法へ切り替えられる体制が必要です。

システムの操作教育が必要

業務後自動点呼では運転者自身が機器を操作するため、操作に慣れるまで時間がかかる場合があります。

通常の操作だけでなく、認証エラーや異常値が出た場合の対応も教育しておきましょう。

個人情報・生体情報の管理が必要

本人確認のための顔画像やアルコール測定結果、点呼記録などの情報を取り扱います。

アクセス権限やデータの保存・削除方法を定め、不正アクセスや情報漏えいを防止する対策が必要です。

システムだけでは安全を担保できない

業務後自動点呼は点呼作業の省人化に役立つ仕組みですが、運行管理そのものをすべてシステムに任せられるわけではありません。

異常が確認された場合に適切に対応できる運行管理体制を維持し、安全性を確保したうえで運用することが重要です。

目視・手書き・紙管理など業務後点呼における課題

従来の対面による業務後点呼では、運転者の帰庫時間に合わせて運行管理者等が待機する必要があります。

特に長距離輸送や夜間運行では、帰庫が深夜・早朝になることもあり、運行管理者等の長時間労働や不規則な勤務につながる場合があります。

また、確認結果を紙の点呼簿へ手書きすると、記入漏れ、判読しにくい文字、転記ミスなどが起こる可能性があります。

紙の点呼記録簿は保管場所も必要で、過去の記録を探したり、監査用に整理したりする手間もかかります。業務後自動点呼や点呼管理システムを導入することで、こうした作業を効率化しやすくなります。

業務後自動点呼に関するよくある質問

業務後自動点呼を導入すれば、運行管理者を置かなくてもよいですか?

いいえ。業務後自動点呼は、点呼時に運行管理者等がその場に立ち会わなくてもよい仕組みです。

運行管理者の選任義務そのものがなくなる制度ではありません。異常が発生した場合の対応などを行う運行管理体制が必要です。

市販のアルコール検知器とタブレットだけで実施できますか?

できません。業務後自動点呼として実施するには、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使用する必要があります。

業務後自動点呼は夜間や早朝でも実施できますか?

制度上の要件と使用する認定機器の条件を満たしていれば、深夜・早朝の業務後点呼にも活用できます。

そのため、運転者の帰庫時間に合わせて運行管理者等が待機する負担を軽減する方法として活用できます。

業務後自動点呼は営業所や車庫でしか実施できませんか?

使用する認定機器によって異なります。

営業所・車庫での実施を前提とした機器のほか、認定内容によっては車内、待合所、宿泊施設などで利用できるものもあります。導入前に認定機器ごとの実施可能場所を確認してください。

IT点呼と業務後自動点呼の違いは何ですか?

IT点呼では、映像・音声等を通じて運行管理者等が運転者へ点呼を行います。

これに対し、業務後自動点呼では国土交通大臣の認定を受けた機器が必要な確認・判定・記録を行うため、正常時は運行管理者等がその場に立ち会う必要がありません。

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アネストシステムのBSSは、対面点呼、IT点呼、遠隔点呼、業務前自動点呼、業務後自動点呼など、複数の点呼方法に対応する運送業向けシステムです。

点呼の実施漏れや記入漏れをアラートで知らせるほか、アルコール測定結果の取り込みや、対応機器との連携による健康管理も行えます。

実際に利用できる点呼方法や機能は、契約内容、導入機器、営業所の要件によって異なります。また、自動点呼は国土交通大臣の認定を受けた機器を使用し、所定の届出と運用体制を整える必要があります。

主な管理機能

  • 点呼簿管理機能
  • 点呼簿印刷機能(個別/一括)
  • 運行管理者補助者の点呼割合の管理
  • 休息・休日チェック
  • 乗務可否判断のサポート

主な通知

  • 未承認の点呼の通知
  • 乗務前点呼が未実施の場合の通知
  • 乗務後点呼が未実施の場合の通知
  • 補助者による点呼割合の超過通知
  • 休息不足の通知

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画像引用元:株式会社アネストシステム(https://bss-cloud.info/bss-cloud/

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