運送業界における慢性的な人手不足や、運行管理者の長時間労働が課題となる中、注目を集めているのが「業務後自動点呼」です。本記事では、業務後自動点呼の基本的な仕組みから、企業が導入する具体的なメリット、そして導入に向けて満たすべきシステムや法律上の要件についてわかりやすく解説します。
業務後自動点呼とは?制度の概要と仕組み
対面点呼をシステムで代替する新たな仕組み
業務後自動点呼とは、ドライバーの乗務終了後に行う点呼を、運行管理者を介さずシステム(自動点呼機器)によって無人で実施する仕組みのことです。
従来、乗務後の点呼は原則として運行管理者等が対面で行う必要がありました。しかし、制度の改正により、国土交通省が定めた一定の要件を満たす機器を導入することで、対面点呼の代替として自動点呼が認められるようになりました。これにより、ドライバーは営業所に設置された専用のカメラやアルコール検知器などのシステムに向かって操作を行うだけで、乗務後の報告を完結させることができます。
制度化された背景(運行管理者の負担軽減)
この制度が推進される背景には、運送業界が直面する深刻な人手不足と「2024年問題」があります。
ドライバーの帰庫時間は深夜や早朝になることも多く、それに合わせて運行管理者が待機しなければならないため、運行管理者の長時間労働や不規則な勤務形態が長年の課題となっていました。業務後自動点呼は、こうした運行管理者の過重労働を防ぎ、働き方改革を推進するための強力な解決策として制度化されました。
業務後自動点呼を導入する3つのメリット
運行管理者の深夜・早朝の業務負担を大幅に削減
最大のメリットは、運行管理者の労働環境を劇的に改善できることです。
深夜や早朝に戻ってくるドライバーの点呼のためだけに、運行管理者が事業所に残る必要がなくなります。業務後自動点呼のシステムが自動で本人確認やアルコールチェック、乗務記録の収集を行うため、運行管理者は本来のコア業務に集中できるだけでなく、適正な休息時間を確保できるようになります。
人件費の削減と人手不足の解消
業務後自動点呼の導入は、中長期的なコスト削減にも直結します。
夜間や早朝の点呼業務をカバーするために配置していた人員や、それに伴う深夜割増賃金などの人件費を削減できます。また、「夜勤があるから」と敬遠されがちだった運行管理者の採用活動においても、労働環境の良さをアピールできるようになり、定着率の向上や人材確保の面でも大きなプラスに働きます。
点呼記録のデジタル化・ペーパーレス化による管理効率の向上
自動点呼システムを利用することで、点呼データが自動的にクラウド等に保存・管理される点も大きな魅力です。
手書きの点呼簿による記録漏れや記載ミスがなくなり、監査の際にもデータをスムーズに提示できます。アルコール測定の数値や実施時刻、ドライバーの顔写真などが紐づいて正確に記録されるため、コンプライアンスの強化と事務作業のペーパーレス化を同時に実現できます。
業務後自動点呼の導入要件・必要な準備
業務後自動点呼を開始するためには、単にシステムを買ってくれば良いというわけではなく、国土交通省が定める厳格な要件をクリアする必要があります。
国土交通省が認定した自動点呼機器・システムの導入
最も重要な要件は、国土交通省が認定した「自動点呼機器」を使用することです。
どのシステムでも良いわけではなく、国が求める機能要件(確実な本人確認機能、アルコール検知器との連動機能、データの改ざん防止機能など)を満たし、正式に認定を受けたメーカーの機器を選定しなければなりません。導入検討の際は、必ず認定済み機器であるかを確認しましょう。
実施環境の整備(カメラ、生体認証、アルコール検知器など)
機器の導入にあわせて、適切な点呼を実施できる環境整備も求められます。
なりすましを防止するための高精度なカメラや生体認証システム、呼気中のアルコールを正確に測る検知器の設置が必要です。また、機器の故障や通信トラブルが発生した場合に備えて、運行管理者とすぐに連絡が取れる体制(代替手段)をあらかじめ構築しておくことも必須要件に含まれます。
管轄の運輸支局長等への届出と手続き
すべての準備が整ったら、運用開始の10日前までに管轄の運輸支局長等へ届出を行う必要があります。
必要書類には、使用する自動点呼機器の名称や、機器の配置図、トラブル時の対応マニュアルなどが含まれます。無届での運用は法令違反となるため、社内での運用ルールをしっかりと策定した上で、確実な手続きを行いましょう。
| 要件項目 | 概要 |
|---|---|
| 機器の要件 | 国土交通省が認定した自動点呼機器を使用すること |
| 環境・機能の要件 | 確実な本人確認、アルコール検知、データ保存・改ざん防止機能があること |
| 体制の要件 | 機器の故障やトラブル時に運行管理者等へ連絡できる体制があること |
| 手続きの要件 | 運用開始の10日前までに管轄の運輸支局等へ届出書を提出すること |
業務後自動点呼の導入は、運送業界の働き方改革を大きく前進させる切り札です。要件をしっかりと確認し、自社に最適なシステムを選定することで、運行管理者の負担軽減と業務の効率化を実現しましょう。
業務後自動点呼の仕組み
必要な機器・システム構成
業務後自動点呼は法的に認められるためには、国土交通省の認定を受けた点呼支援機器を使う必要があり、また点呼の実施についても公的に定められている要領を守らなければなりません。
認定機器については国交省が要件を定めており、顔認証や静脈認証といった生体認証機能や撮影機能、アルコール検知機器連携、さらに電磁的方法での記録簿の保管などが必要です。
点呼の流れ
運転者は認定機器に対して顔認証などの生体認証を行った上で自動点呼を開始します。自動点呼ではアルコール検知や口頭での報告などを行う他、運転者ごとの指示や表示によって必要事項の伝達も行われなければなりません。
データの記録・保存方法
アルコール検知の結果や報告内容などは自動的に電磁的方法でデータとして保存され、運転者ごとに一定期間の保管が義務づけられていることも重要です。またデータは必要に応じてCSV形式などで出力できることも必要です。
導入メリット
従来は対面による点呼が必要でしたが、業務前自動点呼を導入することで、運転者が単独で認定機器を使って点呼を行うことができるようになりました。これにより管理体制の抜本的な見直しや人的コストの削減、業務負担の軽減など幅広いメリットが期待できます。
導入時の注意点・課題
業務前自動点呼では運転者や登録者の様々な個人情報や生体情報が保存され、さらにクラウドサーバなどでデータとして保管されます。そのため法定期間のデータ保存は当然として、個人情報の流出対策など情報セキュリティ関連のリスク管理が不可欠です。
よくある質問(FAQ)
Q.IT点呼(遠隔点呼)との違いは?
IT点呼はスマホやPCといったデバイスとアルコール検知機器やカメラなどのIT機器を組み合わせ、運行管理者がリモート環境で運転者に対する点呼を行えます。一方、業務前自動点呼では管理者が不要です。
Q.夜間帯の管理者の関与はどこまで必要か
IT点呼では1営業日における時間制限があり、遠隔点呼でも点呼時は管理者の存在が必要でした。しかし業務前自動点呼では時間の制限や管理者が関与する必要がなくなり、システムが適正に運用される限りは運転者の業務に合わせて24時間体制で点呼を行えます。なお非常時に即応できる環境や備えは必要です。
Q.映像の保存とはどの程度か
運転者の顔を含めて本人だと明瞭に確認できる静止画や動画であり、また点呼やアルコール検知についても適正に受けている様子を確認できる品質でなければなりません。
まとめ
業務前自動点呼は、従来は管理者と運転者による対面もしくはリモート対面での点呼を、国土交通省の認定要件を満たした点呼支援機器を活用することで、管理者不在のまま運転者が単独でシステムを用いて点呼を行えるようにする制度です。
業務前自動点呼では様々なメリットが得られる反面、適正な運用体制を構築することが不可欠です。
DXで解決できます 乗り遅れたくない方はコチラ!

運送業務のデジタル化・DX化でどのようなことを実現できるのか、詳しく解説しています。多くの企業でDX化が進む今、時代に取り残されないためにも、いち早く推進しましょう!