
ここでは運送業のデジタル化が進まないのはなぜなのか、その理由についてリサーチ。背景として考えられることや内部的な要因などを紹介し、今後DXに取り組むことでどのような効果が得られるのか、また導入時に陥りやすい失敗とその解消法について解説します。
デジタル化が進まない運送業界
車両位置情報管理システムを提供するドコマップジャパンが2022年3〜4月に運送業の経営者・役員101名を対象に行った「運送業界のDX実態」に関する調査によると、運送業の経営者の約7割(68.2%)が運送業界においてもDX推進は重要と回答しています。重要だと考える理由としては、「ドライバーが不足しているから」(65.2%)、「ドライバーの労働時間問題」(63.8%)、「ドライバーの高齢化が進んでいるから」(60.9%)が上位に挙がりました。
その一方で、自社でDXが十分に進められていると回答したのはわずか12.9%。「全くそう思わない」「あまりそう思わない」を合計すると75.2%になり、重要性を感じながらも思うようにデジタル化が進んでいないことがわかります。DXを進めている業務についての設問でも、「わからない/答えられない/一切進められていない」が34.7%を占めました。
また運送業経営者の76.2%が「DXの実現によって、運送をより一層効率化していく必要性」が高まっていくと回答しており、DX化が進まない要因を解消できれば、その先の効果について運送業の経営者が期待していることが窺えます。
なぜデジタル化が進まないのか
推進できるノウハウ・人がいない
先述の調査で、DXが進んでいないと回答した経営者にDX推進の課題を尋ねたところ、最も多かったのが「DXに関するノウハウがない」の51.3%でした。「DXに対する明確なビジョンや戦略がない」という回答も31.6%あることから、やりたくてもどう進めればよいかわからないというのが実態と考えられます。
また「現状の業務で手一杯になっており、DXを進める余裕がない」が30.3%、「ITに精通した人材がいない・雇い入れるあてがない」が28.9%など、DXを進められる人材が不足していることも理由として挙がっています。本業ですら人材不足なのにDXまでは考えられないというのが本音でしょう。
デジタル化に関する理解不足
デジタル化については、経営者が理解していても、現場や取引先からの理解が得られないことがあります。先の調査でもDX推進の課題として「取引先からの理解・協力が得られない」が25.0%、「現場サイドから抵抗がある」が10.5%ありました。
これには運送業の取引形態が一次下請、二次下請と多重構造になっていることも関係します。同調査の自由回答でも、孫請けの仕事が多く元請けのシステム下で業務を行う以上、自社だけでは限界があるという声が寄せられています。また運行予定の変更や突発的な仕事の依頼などイレギュラー要素が多く、標準化したシステムを導入しにくい部分もあります。
デジタル化に取り組まないと求人が難しくなる?
デジタル化が難しいとしても、取り組まなければ周囲から取り残されるおそれがあります。先の調査でも、DX推進が重要な理由として46.4%の経営者が「他業種と比べるとDXが進んでいないから」を挙げており、業界内でも危機感が共有されていることがわかります。
2024年4月からは、トラックドライバーなど自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、特別条項付きの36協定を結ぶ場合でも上限は年960時間(休日労働を含まない)となりました。限られた労働時間の中で業務を回すには、配車や労務管理、事務作業の効率化が欠かせません。
さらに2026年4月からは改正物流効率化法により、一定規模以上の荷主や物流事業者が「特定事業者」に指定され、中長期計画の作成や定期報告などが義務付けられています。荷主側も荷待ち・荷役時間の削減や積載効率の向上に取り組む必要があり、運送会社にもデータに基づいた運行状況の共有が求められる場面が増えていくと考えられます。
運送業にとって人材不足は大きな課題の一つですが、アナログな働き方のままでは長時間労働や紙の事務作業の負担が残り、求職者から選ばれにくくなる可能性があります。荷主企業からも、生産性が低くデータ連携がしにくい会社と評価され、取引に影響が出ることも考えられます。
運送業務をデジタル化するとどうなる?
運送業務をデジタル化するとどんな効果が得られるのか、今一度整理してみましょう。まず、これまで紙で行っていた配送伝票の処理をデジタル化するだけで、紙や印刷コストが削減でき、紛失や改ざんのリスクも軽減できます。
また、システム化により配送業務全体を可視化することで、トラックの現在地や到着予定時間などを把握しやすくなり、業務効率が向上します。配車の無駄や待機時間を見直しやすくなるため、限られた車両台数とドライバーで業務を回すための土台づくりにつながります。
最初から完璧を求めなくても、できることから始めれば、社内外でデジタル化するメリットが理解されるようになるでしょう。ただし、全体像を描かないまま業務ごとにバラバラにシステムを導入すると、かえって手間が増えてしまうこともあります。先の調査でも、DX推進の課題として11.8%が「既存システムが複雑化している」と回答しています。次の項目では、DX化でよくある失敗とその解消法を紹介します。
DX化したのに事務作業が減らない?
「複数システムの乱立と二重入力」トラブルの解消法
運送業界に限らず、全国の多くの事業者や団体で、「DX化を推進しているのに事務作業が減らず生産性が向上しない」といった悩みや不満を抱くケースは少なくありません。
DX化は日々の業務効率を改善して従業員の負担軽減や企業の生産性向上に寄与する反面、導入過程に問題があればむしろ業務効率を悪化させて生産性を低下させる要因にもなり得ます。
ここではDX化が逆にトラブルやリスクを招く理由と解決策について、基本的な考え方を紹介しますので参考にしてください。
起こりがちなトラブル(現状)
勤怠管理や点呼管理、従業員の給与計算や労務管理といった各業務をそれぞれ個別のデジタルツールで管理した結果、各システムの連携が行えず、管理者がデータをCSV形式で書き出して、他のシステム用に加工し、再び入力して運用する、といった工数の増加につながることがあります。
また導入したシステムについての理解や活用法が共有されておらず、従業員が十分に機能を使いこなせずに業務が滞ってしまうといったケースも少なくありません。
なぜ起こるのか(原因)
業務全体を包括的に考えるのでなく、各部署や各業務の担当者から個別にヒアリングを行い、場当たり的にシステムを導入することで、トータルのシステム連携や生産性が悪化してしまうことが原因です。
一見すると、各部署における業務上の課題が解決して生産性が向上したように思えても、全体的な業務効率で見れば問題が悪化しているといった状況になります。
対処方法・解決策
DX化は個々の業務単位で考えるのでなく、事業全体の業務フローやオペレーションを踏まえて総括的なシステムデザインを考えることが大切です。
具体的な対策としては、DX化に取り組むと決めた段階で自社の業務内容や現状の課題を俯瞰的にチェックし、統合型(オールインワン)のシステム導入をプランニングすることが挙げられます。特に、運送業の業務に特化したデジタルツールやシステムを導入することで、各部門をまたいで網羅的なDX環境の構築を目指すことにつながります。
また、すでに各部署で個別のシステムやツールを導入してしまっており、今さら新たな統合型システムを導入することが難しいといった場合は、既存システムを連結する土台としてAPI連携の可能性を検討することも有効です。複数システムを相互に連携して、必要なデータの書き換えや調整を自動化できるようなAPIを用意できれば、既存環境をそのまま利用しつつDX化によるメリットを追求できるようになるでしょう。
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