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ホワイト物流の取り組み

目次

物流業界における効率化や生産性向上を目的として行う取り組みを「ホワイト物流」と呼んでいます。この取り組みは長期的に安定した物流の供給を目指すものであり、生産性の向上の他にもドライバーの安全性向上や環境への配慮が行えるといったさまざまなメリットがあるとされています。

そこで本記事では、この「ホワイト物流」の取り組みについて解説していきます。取り組みの概要や期待できるメリットに加え、課題として挙げられている点などについてまとめました。

ホワイト物流とは

「ホワイト物流」とは、物流業界において物流効率化や生産性の向上を目的として行っている取り組みを指します。物流業界においては労働力不足が近年の課題となっていますが、ホワイト物流の推進によって物流事業者や荷主企業など物流システムに関係するすべての人が連携し、長期的に安定した物流供給を目指しています。

ホワイト物流の取り組みには、2019年から順次施行されている働き方改革関連法案も関連しています。この法案の施行により、物流業界における環境改善についても注目され始めました。例えばドライバーの長時間運転や荷物の積み上げや積み下ろしなどの荷役作業の際に発生する待機時間などの改善などを行うこともホワイト物流の取り組みであるといえます。

ホワイト物流の概要

ホワイト物流賛同企業とは

政府は2019年に「ホワイト物流賛同企業」を募集し、上場企業などを含む約6300社に参加を呼びかけました。 全国各地で説明会も実施され、2022年11月時点で1504社以上が賛同しています。 この運動は効率的な物流を推進し、「荷待ち時間の削減」や「荷役作業の軽減」といった目標を達成するために、パレットの活用や作業の分離など、作業効率を向上させる施策を検討しています。

ホワイト物流の方針

政府はホワイト物流の方針として、運賃と運送の関係を明確化するために標準貨物自動車運送約款を改正し、待機時間料や積込料などの具体的な料金を定めるなど、適正な料金収受を進めています。 さらに、2024年4月からは自動車運送業での時間外労働の上限を規制する罰則が導入されます。 長時間労働の是正のために導入されたこの規制は、段階的に年960時間以内に制限される予定で、将来的には一般の業界にも適用されることを目指しています。

政府行動計画

政府の自動車運送業の働き方改革計画は、時間外労働の上限規制や長時間労働是正のための環境整備、インセンティブの強化など88の施策で構成されています。 この計画の中で、「労働生産性の向上」と「多様な人材の確保・育成」の項目には、「機械荷役への転換促進」という要素が含まれています。 機械荷役はフォークリフトを使った荷役作業で、荷役時間の短縮と労働者の負担軽減が目的です。政府はフォークリフトを利用するための荷役台やパレットの活用を企業や団体に呼びかけており、ホワイト物流の実現を推進しています。

ホワイト物流推進運動への参加方法

必須項目への賛同

まず、ホワイト物流の趣旨を理解し、「取組方針」「法令遵守への配慮」「契約内容の明確化・遵守」の3つの必須項目に賛同を表明します。 取組方針では物流企業の課題を認識し、関係者と協力して取り組む姿勢を示します。法令遵守への配慮では取引先の法令遵守を支援する意思を、契約内容の明確化・遵守では契約の明確さと遵守を示します。

任意項目の選定

必須項目を基に、さらに自社で取り組む項目を選定します。 ポータルサイトに挙げられた推奨項目を参考にするか、独自に対策を検討します。例えば、パレット活用や運転以外の作業分離、契約の書面化などがあります。

書類提出

ポータルサイトから「自主行動宣言様式フォーマット」をダウンロードし、必要な情報を記入して事務局に提出します。 必須項目の賛同企業名が公表され、任意項目の公表は各社の判断に委ねられます。公表内容は適宜変更可能です。

ホワイト物流が必要な背景とは

ドライバーが不足している

ホワイト物流が必要とされる背景として、まず「ドライバー不足」が挙げられます。2022年に経済産業省・国土交通省・農林水産省によって発表された「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、トラックドライバーが不足している企業は増加傾向にあります。

ドライバー不足となっている原因としては、少子高齢化による労働人口の減少や、トラックドライバーはその労働環境から人材確保が容易ではないといった理由も挙げられています。このような背景から、ドライバー不足という問題に対応するためには、トラックドライバーという仕事に価値と魅力を付加することによって若年層を取り込むといった対策が必要といえるでしょう。

参照元:経済産業省・国土交通省・農林水産省「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」
(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf)

労働環境と賃金の改善が必要

上記でも少しご紹介しましたが、トラックドライバーが不足している要因としては、その労働環境も関係していると考えられています。具体的には重労働であるという点、また低賃金であるといった待遇面により、人材の確保が困難になっているといえます。

トラックドライバーは長距離を走るケースが多く拘束時間が長い点、また荷主都合による長い待機時間が発生するといった点が重労働の例として挙げられます。これらは効率や生産性を低下させる原因となり、結果的に労働時間に対価が見合わない、という状況を作り出してしまいます。

さらに、ECが普及しているという状況もトラックドライバーの重労働に関係しています。これまでは物流が企業間の往来で完結していたものの、現在は企業と個人間での往来となっているために複雑化し、輸送の回数も多くなっていることからドライバーにかかる負担も増大しています。

このような背景から、トラックドライバーの労働環境と賃金の改善が必要とされています。

ホワイト物流に関わる法律

さらに2019年から順次施行が始まっている働き方改革関連法も、ホワイト物流の取り組みと関係しています。働き方改革関連法において、物流業界に関連している内容は下記のようなものがあります。

  • 残業時間の上限を規制
  • 「勤務間インターバル」制度の導入
  • 年次有給休暇取得の義務化
  • 月60時間を超える残業は割増賃金率を引上げ(25%から50%へ)
  • 労働時間の状況の客観的な把握
  • 「フレックスタイム制」の拡充
  • 「高度プロフェッショナル制度」の導入
  • 産業医・産業保健機能の強化
  • 同一労働同一賃金の実現

上記の中で、中小企業における月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率の引上げという部分については、2023年4月1日からとなっており、業務時間に見合った適正な対価支払いが期待されているという状況です。

また「残業時間の上限規制」は2024年4月より適用されることになっており、「自動車運転の業務」の場合上限の時間外労働時間が年960時間と定められています。こちらの規制は、ドライバーの不足をより加速させる可能性があるとして、「物流業界の2024年問題」と呼ばれています。

参照元:厚生労働省  働き方改革〜一億総活躍社会の実現に向けて〜
(https://www.mhlw.go.jp/content/000474499.pdf)

ホワイト物流に取り組むメリット

生産性の向上が見込める

ホワイト物流に取り組むことのメリットとしてまず挙げられるのは、「生産性向上」が期待できるという部分です。物流の効率化を行うためには物流システムの導入が選択肢のひとつとなりますが、システムの導入を行った場合には繁忙期の物流管理なども行いやすくなります。また、配車システムの導入により配送ルートを設計することによって、交通状況や日時指定といったさまざまな情報を考慮しながら、効率的に配送を行えるようになります。

また、このようなシステムを導入すれば、物流センターや倉庫内における作業効率の向上や業務負荷の軽減が期待できることから、物流全体において最適化を図れると考えられます。

環境問題への配慮

さらに、ホワイト物流に取り組むことによって環境問題への配慮が行えるといったメリットも期待できます。物流業界においては、二酸化炭素の排出による地球温暖化問題に配慮する必要がありますが、近年陸運業会ではハイブリッド車や天然ガス車、電気自動車などが導入されるといった形で環境への配慮が進められています。

このような状況に加えて、荷主企業において再配達を減らすための取り組みを行えれば、使用燃料の削減につながることからより環境への配慮が進められると考えられます。

また、トラックに加えて鉄道や船など複数の輸送手段を用いるなど輸送手段を変更したり、段ボールなどの梱包に使用する資材の再利用などを行うことも環境配慮に向けたホワイト物流の取り組みといえます。

ドライバーの安全性向上

物流効率化の実現によってドライバーの安全性向上にもつながると考えられます。効率的な配送が行えることによってドライバーが必要以上に時間に追われることがなくなります。また、2024年4月1日からはトラック運転者の時間外労働における上限が年960時間に規制される予定となっていることからも、長時間労働による体力消耗の防止につながると考えられます。

このような取り組みから労働環境が改善され、安全性の高い物流の仕組みの構築が期待されているという状況となっています。

ホワイト物流実現のための課題

輸送コストの上昇

ホワイト物流を実現するためには物流業者の賃金を含む労働環境の見直しが必要とされていることから、「輸送コストの上昇」が課題として挙げられています。高品質な物流を適切な利益率で提供するといった状況を実現するにあたり、物流費が高騰することが懸念されている状況となっています。

荷主企業との課題

輸送コストの上昇によって、荷主企業にとっても物流費用の引き上げが大きな問題となってくる可能性もあります。物流費用の上昇によって自社のビジネスに大きな影響を与えると予想される場合には、価格の引き上げを一度に受け入れるといったことは難しいと予想され、取引がなくなるといった状況も考えられます。

このような状況を防ぐためにも、配送費の値上げについては綿密に料金を設定するなど双方が納得できるよう意見交換を行っていくことが必要となるでしょう。

労働時間等の管理

ホワイト物流の取り組みにあたっては、労働時間や走行距離などをしっかりと管理することが必要となります。なぜなら、これらの指標がホワイト物流の成果を示すものであるためです。

労働時間や走行距離を管理するためには、システムを新しく導入するなどホワイト物流の取り組みを正しく運用していくための設備について導入を検討する必要があるといえます。

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