運送業の労災の傾向
運送業の労災では、荷役関連作業に起因する災害が多いといわれています。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会が発表した「労働災害発生状況」によると、陸上貨物運送事業における令和4年の死亡者数は90人(前年比+1)。90人の死亡災害の内37%ほどが交通事故によって亡くなっていますが、「墜落・転落」や「はさまれ・巻き込まれ」「飛来・落下」「崩壊・倒壊」などによって亡くなっている方も多いのが現状です。
また、陸上貨物運送事業における令和4年の死傷者数は16,850人(前年比+225)。死傷災害の最も多い原因は「墜落・転落」であり、「動作の反動・無理な動作」「転倒」と続きます。
運送業では交通事故による労災が最も多いと考えられがちですが、実は墜落や転落、はさまれや巻き込まれといった事故の方が多いことがわかります。
運送業の労災が認められる要件
労災が認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの認定基準を満たすことが必要です。
業務遂行性とは、労働者が使用者との労働関係を結んでいることを意味しています。また、業務起因性とは、業務が起因となった災害であることをさします。
業務災害
業務災害とは、使用者と労働関係を結んだ労働者が、業務に起因して疾病や傷害を被ることをさします。たとえば、運送中の交通事故や荷下ろし作業中の怪我などは、業務災害に該当します。
通勤災害
通勤災害とは、業務に付随した移動中に災害を被ることをさします。たとえば、住居と職場の移動や業務都合での移動などのほか、業務に必要な引っ越しのための移動も通勤災害に該当します。
ただし、本来の通勤経路を逸脱した移動などは、業務との関連性が低いとみなされ、労災として認められないでしょう。
腰痛は労災にあたる?
運送業では、長時間の運転や重い荷物の積み下ろしなどが体に負担を与えます。腰痛に悩まされているドライバーも多いようですが、ドライバーの腰痛すべてが労災として認められるわけではありません。
腰痛が労災として認められるには、「業務に起因する腰痛である」といえなければなりません。厚生労働省は、3ヵ月以上の長期間で長距離運転手として働き、筋肉疲労で腰痛を発症した場合の基準を設けています。そのためドライバーになる前からの腰痛は、労災が認められない可能性があります。
運送業の個人事業主は労災保険給付の対象外?
個人事業主として運送業を営む人は増えています。しかし、会社と労働関係を結ばない個人事業主は、労災保険給付の対象外。そのため、個人事業主が労災保険へ加入したい場合は、各都道府県の特別加入制度を利用する必要があります。
特別加入制度とは、労働者以外の人に用意された労災補償制度です。加入するためには一定の条件を満たす必要がありますので、各都道府県の労働局や労働基準監督署へ問い合わせましょう。
運送業で労災事故にあった場合の申請方法
労災保険給付を受けるためには、労働基準監督署による労災認定を受ける必要があります。
労災事故が発生した場合は、速やかに労災保険の申請を行いましょう。被災者自身(または遺族)が請求書を作成し、会社を通じて労働基準監督署へ提出。労働基準監督署は労災内容を調査し、補償の支給・不支給が決定します。支給が決定した場合には、厚生労働省から指定口座へと振込が行われます。
運送業の労災を防ぐには
運送業の労災事故をゼロにはできません。しかし、労災事故を減らす取り組みは必要です。運送業における労災事故は増加傾向にあり、長時間労働や人材不足などのさまざまな原因が考えられます。
そのため、運送業の働き方改革が重要。人依存の管理を行うのではなく、DX化を進めて業務改善を実現し、労災事故の発生防止につなげましょう。
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