運送業界では、運転者が適切な状態で業務に従事できることを確認するため、運行管理者や運行管理補助者による運転業務前の「点呼」が法的に義務付けられています。
一方、従来は責任者による対面点呼が必要とされていましたが、運送業界の深刻な人材不足や業務効率化への対策として、国土交通省は2025年4月30日に「令和7年国土交通省告示第347号」を出し、一定の要件を満たした「自動点呼機器」による「業務前自動点呼」の制度化を決定しました。
※参照元:国土交通省「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示」(令和7年国土交通省告示第347号)【PDF】https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001887464.pdf
業務前自動点呼の仕組み
必要な機器・システム構成
- 国土交通省の認定機器
- アルコールチェッカー
- カメラ・顔認証システム
- 体温測定機器
- 点呼記録システム など
点呼の流れ(ステップバイステップ)
対面点呼でも自動点呼でも、基本的に確認しなければならない項目は同じであり、点呼ではそれらの各項目について適宜チェックすることが求められます。
顔認証システムによる運転者の識別や情報の確認を始めとして、全身の健康状態のチェックやアルコール検知器による検査、その他にも事前に確認・共有すべき情報の精査などが総合的に実施されます。
なお、自動点呼機器が運転者の健康状態に異常を検知した場合などは、直ちに自動点呼を中断し運行管理者へ通知することも必要です。
データの記録・保存方法
自動点呼の様子や状況はデジタルデータとして保存され、例えば点呼時に撮影された映像や音声はクラウド上のサーバに記録され、さらに運行管理者などの担当者とも共有されます。
導入メリット
業務前自動点呼の導入メリットとして、点呼執行者の業務負担の軽減や24時間対応によるロジスティクス業界の作業効率化、また点呼記録の自動化やペーパーレス化による業務効率化などが考えられます。
その他にも人件費の削減や遠隔対応・非接触対応による感染症対策の強化、適切なデータ管理や業務記録によるコンプライアンス強化といった点もメリットです。
導入時の注意点・課題
業務前自動点呼の導入に当たっては、あらかじめ注意事項やトラブル対策について把握しておくことも欠かせません。具体的には初期コストやランニングコストといった費用面に加えて、トラブル時の対応強化や運転者などへの理解の促進、また完全に自動化できない点についての対策なども必須です。
当然ながら国土交通省の認定機器といった法令要件についても適切にチェックしておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q.自動点呼で完全に対面点呼を代替できるか
A.自動点呼機による完全な業務の代替はできません。現行の法令では、自動点呼機器は対面点呼の補助的な役割として位置づけられています。乗務後の点呼など一部の業務では自動点呼機の使用が認められていますが、運行管理者による対面点呼が原則として必要です。特に乗務前点呼では、運転者の健康状態や酒気帯びの有無など、安全運行に関わる重要な確認事項があるため、人による判断が不可欠とされています。
Q.導入に必要な期間は
A.ケースバイケースですが、一般的に3〜6ヶ月程度を見込んでください。
導入期間は事業規模、既存システムとの連携、従業員数などによって大きく異なります。機器の選定・発注から納品まで1〜2ヶ月、設置・初期設定に2〜4週間、従業員への研修と試験運用に1〜2ヶ月程度が目安となります。既存の運行管理システムとの連携が必要な場合は、さらに時間を要することがあります。
Q.補助金・助成金は利用できるか
A.自動点呼機器導入促進助成事業など利用可能な補助金や助成金があります。
国土交通省や各都道府県のトラック協会などが実施する助成制度が利用できます。例えば、自動点呼機器導入促進助成事業では、機器購入費用の一部(上限あり)が補助されます。また、IT導入補助金や働き方改革推進支援助成金なども活用できる場合があります。申請時期や条件は制度により異なるため、事前に各窓口への確認が必要です。
Q.トラブル発生時の責任の所在
A.自動点呼の運用に関して責任は事業者と運行管理者にあります。機器の故障や誤作動が発生した場合でも、最終的な管理責任は事業者および運行管理者が負います。そのため、機器の定期的なメンテナンス、バックアップ体制の構築、トラブル時の対応マニュアルの整備が重要です。また、メーカーとの保守契約により、迅速なサポートを受けられる体制を整えることも推奨されます。
Q.小規模事業者でも導入可能か
A.小規模事業者でも導入可能です。保有車両数が少ない事業者向けに、コンパクトで低価格な機種も提供されています。クラウド型のシステムを選択すれば、初期投資を抑えることも可能です。また、複数の営業所で共同利用できるタイプもあり、費用対効果を高められます。導入費用の負担を軽減するため、リース契約やレンタル契約を活用する方法もあります。
まとめ
従来は法的義務とされていた運転者に対する対面点呼が、制度改正に伴い一定要件を満たすことで自動機器による自動点呼でも対応できるようになりました。ただし業務前自動点呼の導入には注意点もあり、まずは信頼できるメーカーや専門家に相談して体制を整えることが大切です。
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