業務前自動点呼とは、国土交通大臣が認定した自動点呼機器を使用し、運行管理者等がその場で立ち会わなくても、運転者が業務前の点呼を受けられる仕組みです。
2025年4月に制度化され、早朝・深夜の点呼における運行管理者等の負担軽減や、点呼記録の自動化などが期待されています。
ただし、業務前自動点呼は認定機器を導入するだけで実施できるものではありません。使用する機器や実施場所、異常時の対応体制などが制度上の要件を満たしているかを確認し、必要な届出を行う必要があります。
本記事では、業務前自動点呼の仕組みや導入要件、対面点呼・遠隔点呼・業務後自動点呼との違い、メリット・注意点、導入手順を分かりやすく解説します。
業務前自動点呼とは?
業務前自動点呼とは、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を使用し、運行管理者等がその場で対面することなく、運転者が業務前の点呼を受けられる制度です。
自動点呼機器が、本人確認、酒気帯びの有無、健康状態など業務前点呼で必要となる事項を確認・判定し、その結果を記録します。
従来、業務前の点呼は原則として対面で行う必要がありました。国土交通省では、ICTを活用しながら安全性と運行管理業務の効率化を両立するため、遠隔点呼や業務後自動点呼などの制度整備を進め、2025年4月に業務前自動点呼を制度化しました。
業務前自動点呼を利用することで、早朝・深夜の出庫に合わせて運行管理者等が点呼場所へ常時立ち会う負担を減らせる可能性があります。
ただし、業務前自動点呼を導入しても、運行管理者の選任義務や安全運行を確保する責任がなくなるわけではありません。異常が確認された場合に運行管理者等が対応できる体制を整えておく必要があります。
点呼方法の違いが分かる早見表
業務前自動点呼のほかにも、対面点呼、遠隔点呼、業務後自動点呼など複数の点呼方法があります。
それぞれ、運行管理者等の立ち会いの有無や使用する機器、実施できるタイミングなどが異なります。まずは各方法の違いを一覧で確認しましょう。
| 比較項目 | 対面点呼 | 遠隔点呼 | 業務前自動点呼 | 業務後自動点呼 |
|---|---|---|---|---|
| 基本的な方法 | 運行管理者等と運転者が同じ場所で対面して実施 | 映像・音声などを使い、離れた場所にいる運行管理者等が実施 | 国土交通大臣が認定した機器が確認・判定し、運転者が単独で実施 | 国土交通大臣が認定した機器が確認・記録し、運転者が単独で実施 |
| 主な実施タイミング | 業務前・業務後など | 業務前・業務後など | 業務前 | 業務後 |
| 運行管理者等の立ち会い | 必要 | 必要 | 原則不要。ただし異常時に対応できる体制が必要 | 原則不要。ただし異常時に対応できる体制が必要 |
| 主な使用機器 | アルコール検知器など | 告示要件を満たすカメラ、モニター、通信設備、本人確認機能など | 国土交通大臣が認定した業務前自動点呼機器 | 国土交通大臣が認定した業務後自動点呼機器 |
| 本人確認 | 対面で確認 | 生体認証など、なりすましを防止できる方法 | 生体認証など、認定機器で定められた方法 | 生体認証など、認定機器で定められた方法 |
| 主な実施場所 | 営業所、車庫など | 営業所、車庫、一定の条件を満たす車内、待合所、宿泊施設など | 認定機器ごとに定められた営業所、車庫、車内、宿泊施設など | 認定機器ごとに定められた場所 |
| 記録方法 | 紙または電子データ | 点呼日時、確認結果、アルコール測定結果などをシステムに記録・保存 | 確認・判定結果をシステムに自動記録・保存 | 確認・判定結果をシステムに自動記録・保存 |
| 主な手続き | 通常は点呼方法としての届出不要 | 原則として実施予定日の10日前までに届出 | 原則として実施予定日の10日前までに届出 | 原則として実施予定日の10日前までに届出 |
| 向いているケース | 同一拠点で運転者の状態を直接確認したい | 複数拠点などの点呼業務を集約したい | 早朝・深夜を含む業務前点呼を省人化したい | 帰庫時間が分散する業務後点呼を省人化したい |
業務前自動点呼の仕組み
業務前自動点呼では、国土交通大臣が認定した機器を使って、運転者本人であることや酒気帯びの有無、健康状態など、業務前点呼に必要となる事項を確認します。
一般的なWeb会議システムやアルコール検知器を単純に組み合わせただけでは、業務前自動点呼として実施することはできません。
国土交通大臣が認定した業務前自動点呼機器を、認定された範囲・方法で利用する必要があります。
業務前自動点呼の流れ
具体的な操作は使用する機器によって異なりますが、一般的には次のような流れで実施します。
- 本人確認
顔認証などを使い、対象となる運転者本人であることを確認します。 - アルコール測定
アルコール検知器を使用し、酒気帯びの有無を確認します。 - 健康状態等の確認
健康状態や疲労、睡眠不足など、業務前点呼に必要となる事項を確認します。 - 車両・運行に関する確認
日常点検の実施状況など、乗務前に確認すべき事項をチェックします。 - 指示事項の確認
運行管理者等が登録した指示や注意事項などを確認します。 - 結果の記録・保存
確認・判定結果をシステムに記録します。
異常が検出された場合には、運行管理者等へ連絡し、運行の可否を適切に判断できる体制を整えておく必要があります。
業務前自動点呼制度の成り立ちと改正の経緯
ICTを活用した点呼制度は段階的に拡大されてきました。業務前自動点呼も、業務後自動点呼と同時に制度化されたわけではありません。
| 時期 | 主な動き | 制度上の意味 |
|---|---|---|
| 2022年4月 | 遠隔点呼制度が開始 | 一定の機器・施設・運用要件を満たすことで、離れた場所から点呼を行える制度が開始 |
| 2023年4月 | 遠隔点呼と業務後自動点呼が省令・告示に位置付けられる | 業務後について、認定された自動点呼機器による点呼が制度化 |
| 2025年4月 | 業務前自動点呼が制度化 | 国土交通大臣が認定した機器を使い、一定の要件のもとで業務前点呼を自動化できるようになる |
| 2026年6月 | 点呼告示が改正 | 遠隔点呼・自動点呼を含む制度や運用について整理が進む |
このように、2023年4月に制度化された業務後自動点呼と、2025年4月に制度化された業務前自動点呼は区別して理解する必要があります。
業務前自動点呼の導入要件
業務前自動点呼を検討するときは、「事業者要件」「設備要件」「運用体制要件」の3つに分けて確認すると、自社が導入できるかを判断しやすくなります。
認定機器を導入しただけでは業務前自動点呼を開始できないため、実施する営業所や場所、機器・システム、異常時の対応方法なども含めて準備しましょう。
事業者要件
業務前自動点呼を実施する事業者は、法令に基づく運行管理体制を整えたうえで、自動点呼を実施する営業所について必要な手続きを行います。
- 貨物自動車運送事業者など、対象となる自動車運送事業者であること
- 法令に基づく運行管理者の選任・届出が適切に行われていること
- 業務前自動点呼を行う営業所や対象となる運転者を明確にしていること
- 国土交通大臣が認定した業務前自動点呼機器を使用すること
- 自動点呼の実施に必要な届出を行うこと
業務前自動点呼は運行管理者を不要にする制度ではありません。異常時の対応や乗務可否の判断などを行う運行管理体制を引き続き確保する必要があります。
設備要件
業務前自動点呼では、国土交通大臣の認定を受けた自動点呼機器を利用します。
主に次のような確認・記録を行える機能が必要です。
- 運転者本人であることを確実に確認できる機能
- アルコール検知器を使い、酒気帯びの有無を確認できる機能
- 運転者の健康状態等を確認できる機能
- 業務前点呼で必要となる確認事項を確認できる機能
- 運行管理者等からの指示事項を運転者へ伝えられる機能
- 点呼日時、対象者、確認・判定結果などを記録・保存できる機能
- 異常時に運行管理者等へ連絡できる機能
また、認定機器によって使用できる場所が異なります。
営業所・車庫のみで利用できるものもあれば、事業用自動車内、待合所、宿泊施設などに対応する機器もあります。自社が業務前自動点呼を行いたい場所が、その機器の認定範囲に含まれているかを確認しましょう。
運用体制要件
業務前自動点呼では運行管理者等が点呼時にその場へ立ち会わないため、異常やトラブルが発生した場合に対応できる体制が特に重要です。
- 酒気帯びや健康状態等に異常があった場合、運行管理者等へ速やかに連絡できる体制
- 運行管理者等が必要に応じて運転者の状況を確認し、乗務の可否を判断できる体制
- 本人確認に失敗した場合の対応手順
- 機器故障や通信障害が発生した場合に、対面点呼その他の適法な方法へ切り替える手順
- 運転者および運行管理者等への操作教育
- 点呼記録を適切に保存し、監査時などに確認できる管理体制
- 個人情報や健康情報などの適切な管理
正常時の操作方法だけでなく、「異常が発生した場合に誰が、どのように対応するのか」まで運行管理規程や社内マニュアルへ定めることが重要です。
業務前自動点呼を導入する手順
導入要件を確認したら、対象となる営業所や運転者を決め、機器選定、届出、環境整備、教育、試験運用の順に進めます。
1.現在の点呼業務と課題を整理する
まず、どの営業所で、誰が、何時に、何人の運転者へ業務前点呼を行っているかを整理します。
早朝・深夜の配置負担、点呼の待ち時間、点呼記録の作成にかかる時間などを洗い出し、自動化する目的を明確にしましょう。
2.導入する対象範囲を決める
どの営業所・運転者を対象とするのか、どの時間帯で業務前自動点呼を利用するのかを決めます。
営業所や車庫だけで利用するのか、車内や宿泊施設などでも利用したいのかも整理しておきましょう。
3.管轄の運輸支局等へ事前相談する
予定している実施場所や対象営業所、運用方法などを整理し、必要に応じて管轄の運輸支局等へ事前に確認します。
導入後に制度上の要件を満たしていないことが判明しないよう、疑問点がある場合は早めに確認しましょう。
4.システム・機器を比較して選定する
国土交通省が公表する認定機器の中から、自社の運用に合った製品を選定します。
機器を比較するときは、次の項目を確認しましょう。
- 認定された点呼の実施場所
- 本人認証方法
- 対応するアルコール検知器
- 健康状態等の確認方法
- 点呼記録の保存・検索機能
- 異常時の通知方法
- 既存の運行管理システムとの連携
- 導入費用・月額利用料
- 保守・サポート体制
5.施設・通信環境と運用規程を整える
認定機器を正常に利用できるよう、通信環境や電源、機器の設置場所などを確認します。
あわせて、対象者、実施時間、確認方法、異常時の対応、通信障害時の代替方法、記録の保存方法、個人情報の取扱いなどを運行管理規程や社内マニュアルへ定めます。
6.必要な申請・届出を行う
自動点呼を実施する場合は、原則として実施予定日の10日前までに、必要な届出を行います。
使用する様式や必要書類は変更される場合があるため、国土交通省や管轄の運輸支局等が案内する最新情報を確認してください。
7.教育と試験運用を行う
運転者に対し、本人認証、アルコール測定、健康状態等の入力・確認、異常時の連絡方法などを教育します。
運行管理者等についても、異常通知を受けた場合の確認方法や、通信障害・機器故障時の対応方法を共有します。
本格稼働前に試験運用を行い、本人認証、測定データ、通知、記録保存などが正常に機能することを確認しましょう。
8.本格運用と定期的な見直しを行う
運用開始後は、点呼漏れ、認証エラー、通信障害、機器故障などが発生していないか定期的に確認します。
制度改正や営業所・車庫の変更、システム更新などがあった場合は、届出や運用規程の見直しが必要かも確認しましょう。
業務前自動点呼のメリット
早朝・深夜の点呼体制を組みやすくなる
業務前自動点呼では、運行管理者等が運転者一人ひとりの点呼時にその場へ立ち会う必要がないため、早朝や深夜の点呼担当者の配置負担を軽減しやすくなります。
運行管理者等の業務を平準化し、人手不足への対応にもつながります。
点呼の待ち時間を減らしやすくなる
多くの運転者が同じ時間帯に出庫する営業所では、対面点呼の順番待ちが発生することがあります。
業務前自動点呼を活用することで、運転者の待ち時間を抑え、出庫時の業務を効率化しやすくなります。
確認漏れや転記ミスを減らせる
確認項目をシステム上で順番にチェックし、アルコール測定結果などを自動で記録することで、手書きによる記入漏れや転記ミスを減らせます。
点呼記録を検索・共有しやすくなる
点呼結果を電子データで保存することで、紙の保管スペースを減らし、必要な記録を検索・出力しやすくなります。
複数拠点の点呼情報を一元管理できるシステムであれば、社内確認や監査対応の効率化にも役立ちます。
安全管理の標準化につながる
確認項目や手順をシステム上で統一することで、担当者ごとの確認方法のばらつきを抑えやすくなります。
定型的な確認・記録をシステムで行い、運行管理者等が安全教育や運行判断など、人による判断が重要な業務へ時間を使いやすくなる点もメリットです。
業務前自動点呼のデメリット・注意点
導入費用と運用費用がかかる
認定機器、アルコール検知器、通信環境、点呼管理システムなどの導入費用がかかります。
クラウド型サービスの場合は、初期費用だけでなく月額利用料や保守費、機器更新費も確認しましょう。
通信環境や機器の状態に左右される
通信障害や機器故障が発生すると、自動点呼を正常に実施できない場合があります。
実際の利用場所で通信や機器の動作を確認し、障害時には対面点呼などへ切り替えられるよう準備しておく必要があります。
認定機器によって利用できる場所が異なる
国土交通大臣の認定を受けた機器であっても、すべての場所で利用できるわけではありません。
営業所・車庫のみで利用できる機器と、事業用自動車内、待合所、宿泊施設などでも利用できる機器があります。
機器を選定するときは、認定された「点呼の被実施場所」を確認しましょう。
システムの操作教育が必要
運転者が操作に慣れるまでは、本人認証やアルコール測定などに時間がかかることがあります。
通常操作だけでなく、認証に失敗した場合や機器が故障した場合の対応も教育しておきましょう。
システムだけでは安全を担保できない
業務前自動点呼は、運行管理者等による安全管理をすべて機械へ置き換える制度ではありません。
酒気帯び、健康状態の異常、本人確認の失敗などがあった場合には、運行管理者等が状況を確認し、必要に応じて乗務を中止させる判断が必要です。
省人化だけを目的にするのではなく、安全性を維持・向上できる運用体制を設計することが重要です。
目視・手書き・紙管理など点呼業務における課題
目視や紙への手書きによる点呼では、出庫が集中する時間帯に運転者の順番待ちが発生し、出庫の遅れや残業につながることがあります。
また、確認結果を手作業で記録すると、記入漏れ、判読しにくい文字、転記ミスなどが起こる可能性があります。
点呼記録簿は法令に基づいて保存する必要があり、紙で管理する場合は保管場所の確保や、過去の記録を探す手間も発生します。
業務前自動点呼や点呼管理システムを活用すれば、点呼そのものだけでなく、記録・保存・検索といった周辺業務も効率化しやすくなります。
運送業務に特化したシステム!
アネストシステムのBSSの自動点呼
アネストシステムの「Business Support System(BSS)」は、運送業務に特化したクラウド型システムです。
BSSでは、点呼管理をはじめ、運送業務に必要となるさまざまな情報をシステム上で管理できます。
また、対応する自動点呼機能を活用することで、業務前自動点呼を含む点呼業務の効率化を図れます。
点呼結果をデータで管理できるため、点呼記録の作成や確認、過去データの検索などの負担軽減にもつながります。
実際に利用できる点呼方法や機能は、契約内容、使用する機器、営業所や実施場所などの要件によって異なるため、導入前に確認してください。
アネストシステムのBSSとは?
業務前自動点呼に関するよくある質問
業務前自動点呼はいつから制度化されましたか?
業務前自動点呼は2025年4月に制度化されました。
2023年4月に制度上位置付けられた業務後自動点呼とは、制度化された時期が異なります。
業務前自動点呼を導入すれば、運行管理者を置かなくてもよいですか?
いいえ。業務前自動点呼を導入しても、法令に基づく運行管理者の選任義務がなくなるわけではありません。
異常時の対応や運行可否の判断などを行える運行管理体制が必要です。
スマートフォンとWeb会議アプリだけで実施できますか?
できません。一般的なスマートフォンやWeb会議アプリだけでは、業務前自動点呼として認められません。
国土交通大臣が認定した業務前自動点呼機器を、認定内容に沿って利用する必要があります。
営業所以外でも業務前自動点呼はできますか?
使用する認定機器によって異なります。
営業所や車庫だけで利用できるものもあれば、事業用自動車内、待合所、宿泊施設などを含む場所で利用できる機器もあります。
業務前自動点呼を始めるには届出が必要ですか?
はい。原則として実施予定日の10日前までに必要な届出を行います。
使用する様式や添付書類については、国土交通省や管轄の運輸支局等の最新案内をご確認ください。
業務前自動点呼で異常が確認された場合はどうしますか?
酒気帯びや健康状態等の異常、本人確認の失敗などがあった場合には、運行管理者等へ連絡し、必要な確認を行います。
機器だけで乗務可否を完結させるのではなく、必要に応じて運行管理者等が判断します。
機器が故障した場合はどうしますか?
通信障害や機器故障で自動点呼を実施できない場合に備え、対面点呼など適法な代替方法へ切り替える手順を定めておく必要があります。
業務前自動点呼に補助金・助成金は利用できますか?
年度や導入する機器、事業者の条件によって、国や業界団体などによる補助・助成制度を利用できる場合があります。
対象機器、助成額、申請期間などは年度ごとに異なるため、導入する年度の最新情報を確認してください。
まとめ
業務前自動点呼は、国土交通大臣が認定した自動点呼機器を利用し、運行管理者等がその場に立ち会わなくても業務前の点呼を行える制度です。
早朝・深夜の点呼担当者の配置負担軽減、運転者の待ち時間の削減、点呼記録の自動化など、運送事業者の業務効率化につながる可能性があります。
一方で、認定機器を購入すればすぐ利用できるわけではありません。事業者要件、設備要件、運用体制要件を確認し、必要な届出や異常時の対応体制を整える必要があります。
導入する際は、現在の点呼業務の課題を整理したうえで、実施場所や対象者を決め、自社に合った認定機器を選定しましょう。
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