業務前自動点呼

運送業の2024年問題対策として注目される「業務前自動点呼」について徹底解説。国土交通省の告示に基づく最新の要件、導入メリット、課題、使える助成金情報まで網羅しています。

目次

業務前自動点呼とは

業務前自動点呼とは、国土交通省が定める認定機器を使用し、運行管理者が対面することなくドライバーの点呼を行う仕組みのことです。

従来、乗務前の点呼は「対面」が必要とされてきましたが、運送業界の深刻な人材不足や業務効率化への対策として、国土交通省は2025年4月30日に「令和7年国土交通省告示第347号」を出し、一定の要件を満たした「自動点呼機器」による「業務前自動点呼」の制度化を決定しました。これにより、運行管理者が不在でも、システムが自動でアルコールチェックや健康状態の確認、指示事項の伝達を完結させることが可能です。

※参照元:国土交通省「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示」(令和7年国土交通省告示第347号)【PDF】https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001887464.pdf

制度の概要

この制度は、運行管理業務の高度化と効率化を目的としています。当初は「業務後」のみ自動化が認められていましたが、令和五年4月より「業務前」の自動点呼も正式にスタートしました。

導入には、国土交通大臣の認定を受けた機器の導入や、適切な監視体制の構築など、厳格な要件をクリアする必要があります。しかし、これらを整備することで、運行管理者が必ずしも営業所に常駐する必要がなくなり、柔軟な働き方改革へとつながります。

また、令和7年には告示の一部改正が行われ、制度の拡充や要件の明確化が進められています。最新の法令に準拠した運用が求められるため、情報のキャッチアップが不可欠です。

※参照元:国土交通省「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示」https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001887464.pdf

業務前自動点呼のメリット

業務前自動点呼の導入は、法令遵守のハードルをクリアするだけでなく、運送事業者の経営課題を解決する手段となります。具体的なメリットを4つの視点から解説します。

運行管理者の業務負担軽減と人件費の削減

一番のメリットは、運行管理者の拘束時間の削減です。

従来の対面点呼では、早朝・深夜の出発に合わせて管理者が営業所に出勤、あるいは泊まり込みで待機する必要がありました。自動点呼システムを導入すれば、管理者が現場にいなくても点呼が完了するため、配置人員の適正化や超過勤務手当の削減が実現します。

深刻な人手不足の中で、資格者である運行管理者の業務環境を改善し、離職を防ぐ施策としても極めて有効です。

安定した点呼品質の維持

人間が行う点呼には、どうしても「慣れ」や「甘え」、あるいは体調による判断のバラつきが生じます。

自動点呼システムでは、高性能なセンサーやAIが客観的な数値に基づいて判断を下します。また、顔認証や静脈認証などの生体認証を用いることで、なりすましや点呼の未実施を物理的に防止。常に一定の基準で安全確認ができる点は大きな強みといえるでしょう。

点呼データの自動記録によるペーパーレス化と管理効率化

点呼記録簿の作成・保存は法律で義務付けられていますが、紙ベースでの管理は保管場所の確保や、過去データの検索に多大な労力を要します。

DX化されたシステムでは、点呼結果が即座にクラウド等へデジタル保存されます。監査対応や事故時の状況確認においても、必要なデータを瞬時に取り出せるため、総務・管理部門の事務作業の効率化が可能です。

ドライバーの待ち時間解消とストレス緩和

複数のドライバーが一斉に出発するピークタイムにおいて、対面点呼ではどうしても順番待ちの列が発生しがちです。

自動点呼機を複数台設置、あるいは各自のスマートフォン端末を活用できるシステムであれば、待ち時間を大幅に短縮できます。出発前のイライラを解消し、スムーズに業務を開始できる環境は、ドライバーの心理的負担を軽減し、結果として安全運転にも寄与します。

業務前自動点呼の要件

業務前自動点呼は、単に機器を導入すればすぐに始められるものではありません。安全運行を担保するため、国土交通省が定める「機器」「環境」「運用」の3つの要件をすべて満たし、運輸支局への届出を行う必要があります。

使用機器・システムの要件

最も重要なのが、国土交通大臣の認定を受けた機器を使用することです。使用するシステムは以下の機能を備えている必要があります。

  • 生体認証機能:顔認証、静脈認証、虹彩認証などを用い、本人確認を確実に行うこと。
  • アルコール検知器との連携:測定結果を自動で記録し、酒気帯びの有無をシステムが判定すること。
  • 体調の確認機能:カメラによる表情分析や、血圧計との連携、あるいは問診形式による入力で、ドライバーの健康状態を把握できること。
  • 指示事項の伝達機能:運行管理者が設定した注意事項や、気象・道路情報を画面や音声で確実にドライバーへ伝える機能。

使用する施設・環境の要件

機器を設置する場所にも、不正防止と安定運用のための環境整備が求められます。

  • 監視カメラの設置:点呼を行っているドライバーの全身や様子、および周囲の状況が鮮明に確認できる監視カメラが必要です。
  • 十分な照度の確保:顔認証やカメラによる健康状態の確認に支障がないよう、照明環境を整える必要があります。
  • 通信環境の確保:点呼データや映像をリアルタイムでクラウドサーバー等へ送信するため、途切れない安定したインターネット回線が必須となります。

運用体制の要件

無人で行う点呼ですが、管理責任がなくなるわけではありません。緊急時や異常検知時に即応できる体制づくりが不可欠です。

  • 運行管理者の配置:点呼自体は自動化されますが、運行管理者は営業所に待機し、トラブル発生時にすぐに対応できる状態である必要があります。
  • 異常時のフロー確立:アルコールが検知された場合や、機器の故障時、通信エラーが発生した際に、誰が、どのように判断し、乗務の可否を決定するかというマニュアルを整備しなければなりません。

※参照元:国土交通省「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示の一部を改正する告示」https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001887464.pdf

業務前自動点呼に活用できる補助金・助成金

導入コストの負担を軽減するため、国や業界団体から複数の助成制度が用意されています。これらを活用することで、初期投資を大幅に抑えることが可能です。ただし、予算上限に達し次第終了となるケースが多いため、早めの申請をおすすめします。

国土交通省:事故防止対策支援推進事業

国土交通省が行っている、過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援事業です。

  • 対象機器:国土交通大臣が認定した「自動点呼機器」「遠隔点呼機器」など
  • 補助率:導入費用の1/2以内
  • 補助上限額:1事業者あたり上限80万円 ※通信機能付一体型デジタコ等を含む場合は上限が異なる場合があります
  • 特徴:補助率が高く、最も利用されている制度の一つです。

※参照元:国土交通省「令和7年度 事故防止対策支援推進事業」https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/sub/index.html

全日本トラック協会:自動点呼機器導入促進助成事業

トラック協会の会員事業者を対象とした助成制度です。

  • 対象:各都道府県トラック協会の会員事業者
  • 助成額:機器導入費用のうち、上限10万円(1台まで)
  • 優遇措置:Gマーク認定事業所の場合、上限2台(計20万円)まで拡大される場合があります。

※参照元:全日本トラック協会「令和7年度 自動点呼機器・DX導入促進助成事業」https://jta.or.jp/member/shien/tenko2025.html

経済産業省:IT導入補助金

中小企業・小規模事業者の業務効率化を支援する制度です。自動点呼システムが「ITツール」として登録されている場合、対象となります。

  • 区分:通常枠(A類型・B類型)など
  • 補助率:1/2など
  • 特徴:ソフトウェア購入費やクラウド利用料も対象になる場合があり、システム利用料の負担軽減に適しています。

業務前自動点呼の課題・注意点

多くのメリットがある業務前自動点呼ですが、導入にあたってはいくつかクリアすべき課題も存在します。これらを事前に把握し、対策を練っておくことが成功のカギです。

導入時の初期コストとランニング費用

高性能な自動点呼機器やシステムの導入には、まとまった初期投資が必要です。また、月額のシステム利用料やクラウドサーバー費用、通信費といったランニングコストも発生します。

ただし、人件費の削減効果や、助成金の活用を視野に入れることで、中長期的にはコストメリットを出せるケースが多くあります。費用対効果のシミュレーションを綿密に行いましょう。

対面点呼と比較した「体調変化」への気づきにくさ

どれほど高性能なセンサーでも、人間の「目」や「勘」には及ばない部分があります。例えば、ドライバーの微妙な顔色の変化や、声のトーンから感じる違和感などは、対面点呼の方が察知しやすい場合があります。

この課題に対しては、バイタルセンサーの併用や、少しでも数値に異常があれば即座に管理者にアラートが飛ぶ仕組みを構築することで、リスクを補完することが重要です。

機器トラブルや通信エラー時のバックアップ体制

システムに依存する以上、停電や通信障害、機器の故障といったトラブルのリスクはゼロではありません。

いざという時に「点呼ができない」事態を避けるため、予備機の確保や、万が一の際は従来の対面点呼や電話点呼に切り替える代替手段を必ず策定しておきましょう。

ドライバーへの操作教育と心理的な抵抗感への配慮

新しい機器の導入に対して、ベテラン・高齢ドライバーを中心に「操作が難しそう」「管理されているようで嫌だ」といった抵抗感が生まれることがあります。

導入前には説明会を行い、操作方法を丁寧にレクチャーするのはもちろん、「待ち時間が減る」「安全性が高まる」といったドライバー側のメリットもしっかり伝えることで、理解を得やすくなります。

自動点呼は非常に有効な手段ですが、運送業の課題解決には、出退勤管理や車両管理などを含めた総合的なデジタル化が必要です。運送業務のDX化による根本的な業務改善や、2024年問題対策の全体像については、下記ページで詳しく解説してるので、ぜひ参考にしてください。

運送業界のDX化・ホワイト化
について詳しく見る

業務前自動点呼の導入手順

実際に導入を進めるための一般的なステップを解説します。法的手続きが含まれるため、余裕を持ったスケジュールで進めてください。

社内検討と機器選定

まずは自社の課題を洗い出し、どの営業所に導入するか、どの程度の機能が必要かを検討します。その上で、国土交通大臣の認定を受けた機器の中から、自社の運用に合ったものを選定します。

ベンダーによってはデモ機の貸し出しを行っている場合もあるので、実際の操作感を確認することをおすすめします。

運輸支局への届出

機器が決まったら、管轄の運輸支局へ届出を行います。

以前は「対面点呼と同等の効果を有するか」の確認に時間を要する場合がありましたが、認定機器を使用する場合は手続きが簡素化されています。ただし、運用開始の前に必ず運行管理規程の変更届出が必要となるため、早めに準備を進めましょう。

試験運用と本格稼働

届出が完了しても、いきなり全ドライバーで一斉スタートするのはリスクがあります。まずは一部のドライバーや特定の時間帯で試験運用を行い、機器の動作確認や運用ルールの浸透を図ります。

問題点を洗い出し、マニュアルを修正した上で、本格稼働へと移行することで、スムーズな導入が可能になります。

業務前自動点呼の仕組み

必要な機器・システム構成

  • 国土交通省の認定機器
  • アルコールチェッカー
  • カメラ・顔認証システム
  • 体温測定機器
  • 点呼記録システム など

点呼の流れ(ステップバイステップ)

対面点呼でも自動点呼でも、基本的に確認しなければならない項目は同じであり、点呼ではそれらの各項目について適宜チェックすることが求められます。

顔認証システムによる運転者の識別や情報の確認を始めとして、全身の健康状態のチェックやアルコール検知器による検査、その他にも事前に確認・共有すべき情報の精査などが総合的に実施されます。

なお、自動点呼機器が運転者の健康状態に異常を検知した場合などは、直ちに自動点呼を中断し運行管理者へ通知することも必要です。

データの記録・保存方法

自動点呼の様子や状況はデジタルデータとして保存され、例えば点呼時に撮影された映像や音声はクラウド上のサーバに記録され、さらに運行管理者などの担当者とも共有されます。

導入メリット

業務前自動点呼の導入メリットとして、点呼執行者の業務負担の軽減や24時間対応によるロジスティクス業界の作業効率化、また点呼記録の自動化やペーパーレス化による業務効率化などが考えられます。

その他にも人件費の削減や遠隔対応・非接触対応による感染症対策の強化、適切なデータ管理や業務記録によるコンプライアンス強化といった点もメリットです。

導入時の注意点・課題

業務前自動点呼の導入に当たっては、あらかじめ注意事項やトラブル対策について把握しておくことも欠かせません。具体的には初期コストやランニングコストといった費用面に加えて、トラブル時の対応強化や運転者などへの理解の促進、また完全に自動化できない点についての対策なども必須です。

当然ながら国土交通省の認定機器といった法令要件についても適切にチェックしておきましょう。

運送業務に特化したシステム!
アネストシステムのBSSの自動点呼機能

アネストシステムのBSSでは、国土交通省の認定を受けた自動点呼システムをオプション追加可能。運行管理者の立ち合いなしに、乗務後点呼を行えます。点呼に必要な基本項目を自動表示してくれるのはもちろん、ドライバーごとに個別の確認事項を設定できるのが魅力。業態に合わせた質の高い点呼を実現できます。また、点呼データは全てクラウド保存。点呼記録簿を自動作成してくれるため、管理・分析が手間なく行えます。

アネストシステムのBSSとは?

BSSの仕組み

よくある質問(FAQ)

Q.自動点呼で完全に対面点呼を代替できるか

A.自動点呼機による完全な業務の代替はできません。現行の法令では、自動点呼機器は対面点呼の補助的な役割として位置づけられています。乗務後の点呼など一部の業務では自動点呼機の使用が認められていますが、運行管理者による対面点呼が原則として必要です。特に乗務前点呼では、運転者の健康状態や酒気帯びの有無など、安全運行に関わる重要な確認事項があるため、人による判断が不可欠とされています。

 

Q.導入に必要な期間は

A.ケースバイケースですが、一般的に3〜6ヶ月程度を見込んでください。
導入期間は事業規模、既存システムとの連携、従業員数などによって大きく異なります。機器の選定・発注から納品まで1〜2ヶ月、設置・初期設定に2〜4週間、従業員への研修と試験運用に1〜2ヶ月程度が目安となります。既存の運行管理システムとの連携が必要な場合は、さらに時間を要することがあります。

Q.補助金・助成金は利用できるか

A.自動点呼機器導入促進助成事業など利用可能な補助金や助成金があります。
国土交通省や各都道府県のトラック協会などが実施する助成制度が利用できます。例えば、自動点呼機器導入促進助成事業では、機器購入費用の一部(上限あり)が補助されます。また、IT導入補助金や働き方改革推進支援助成金なども活用できる場合があります。申請時期や条件は制度により異なるため、事前に各窓口への確認が必要です。

Q.トラブル発生時の責任の所在

A.自動点呼の運用に関して責任は事業者と運行管理者にあります。機器の故障や誤作動が発生した場合でも、最終的な管理責任は事業者および運行管理者が負います。そのため、機器の定期的なメンテナンス、バックアップ体制の構築、トラブル時の対応マニュアルの整備が重要です。また、メーカーとの保守契約により、迅速なサポートを受けられる体制を整えることも推奨されます。

Q.小規模事業者でも導入可能か

A.小規模事業者でも導入可能です。保有車両数が少ない事業者向けに、コンパクトで低価格な機種も提供されています。クラウド型のシステムを選択すれば、初期投資を抑えることも可能です。また、複数の営業所で共同利用できるタイプもあり、費用対効果を高められます。導入費用の負担を軽減するため、リース契約やレンタル契約を活用する方法もあります。

まとめ

従来は法的義務とされていた運転者に対する対面点呼が、制度改正に伴い一定要件を満たすことで自動機器による自動点呼でも対応できるようになりました。ただし業務前自動点呼の導入には注意点もあり、まずは信頼できるメーカーや専門家に相談して体制を整えることが大切です。

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